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こうもり

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こうもり Die Fledermaus

ヨハン・シュトラウスⅡ世が作曲した傑作で、「オペレッタの定番」です。特に序曲は単独でも取り上げられることが多く、ご存知の方も多いと思います。
ドイツ語圏の歌劇場では、通常、オペレッタを上演しない劇場でも、年末だけは「こうもり」を上演します。その理由は、お話の設定が12月31日から1月1日にかけてのエピソードだからです。

プロローグ 題名の由来

初演当時の「こうもり」のポスター

こうもり」というオペレッタなのですが、そもそも妙なタイトルである上に、「オペレッタの内容」と直接関係がありません(もちろん、動物のこうもりが主役のオペレッタではありません)。ですから、初めて観る方は、タイトルがどのように内容と関係があるのか、ピンと来ないと思います。

そこで、「こうもり」という題名の由来をご紹介しましょう。オペレッタの内容から言えば「こうもり博士の笑いの復讐」というのが「本来のタイトル」になります。今流に言えば、大勢の仕掛け人を動員して有名人はめる「ドッキリカメラ」のような内容です。

ターゲットは、新興成金のアイゼンシュタイン氏。実は、それ以外の出演者は、全員仕掛け人です。が、オペレッタを観ているお客さまに「それがわかる」のは、実は3幕のエンディング直前という流れになっています。

仕掛け人の中心人物は、かつて仮装舞踏会にアイゼンシュタイン氏と出席したファルケ博士。この仮装舞踏会にファルケ博士は「こうもり」、アイゼンシュタイン氏は「蝶」の仮装で出席したのは良かったのですが、ファルケ博士は酔いつぶれてしまい、帰宅途中、街中で仮装のまま寝てしまったのです。

その時、友人のアイゼンシュタイン氏はファルケ博士を介抱せず、街中に放置したまま、帰宅してしまいました。翌朝、こうもりスタイルのファルケ博士は、多くの市民の目にさらされながら自宅に戻るはめになりました。それをきっかけに「こうもり博士」というあだ名が付いてしまったのです。

ファルケ博士も、何とかアイゼンシュタイン氏に、一泡吹かせたいと考え、たまたまアイゼンシュタイン氏が、税務署員を屈辱したかどで禁固刑に服することになったタイミングを見計らい、皆で笑いものにしよう(つまり自分と同じような体験をさせよう)と考えたのでした。

これが「こうもり」というオペレッタの前にあるプロローグです。ちなみに、「こうもり博士」というあだ名が付いたいきさつは、2幕のオルロフスキー邸での夜会で、アイゼンシュタイン氏自身が、オルロフスキー侯爵の質問に答える形で説明します。

しかし、この夜会に仕掛け人全員(3幕で登場する看守のフロッシュを除く)参加するのですが、観客にはあたかも偶然、仕掛け人が夜会に集まってきたように見えるお芝居になっています。アイゼンシュタイン氏の奥さまであるロザリンデと女中さんのアデーレは、両者とも仕掛け人なのですが、1幕ではアデーレがお暇を頂くため、ロザリンデともめる場面などが入っています。

さらに、ロザリンデの愛人のように見えるアルフレードも、実は仕掛け人で、今はロザリンデとは不倫関係にはなっていない‥という裏事情が3幕で暴露されます。

つまり、ヨハン・シュトラウスⅡ世は、お客さまも騙すようなストーリー展開にしたという訳です。

こういった事情を知らなくても十分楽しめるのですが、「ドッキリカメラ的な視点」で観ると、各場面でターゲットのアイゼンシュタイン氏を笑いものにする仕掛けが多数、組み込まれていることがよくわかります。

アイゼンシュタイン氏にとっては、裁判に敗れて刑務所に収監される前に、ファルケ博士のアイデアによる「笑いの復讐」を受けるという、踏んだり蹴ったりの年越しになってしまいました。

なお、ウィーンなどでは大晦日、午前0時を回り、新年を迎えると、街中でもシャンペンで乾杯し、大騒ぎをする「慣わし」があります。このオペレッタで、シャンペンで乾杯する場面が多いのは、こういった「慣わし」に沿ったものなのです。

この他、「出演者の名前」も、役のキャラクターを反映して、一ひねりしてあります。例えば、主人公のアイゼンシュタインは日本語で直訳すると「石頭」という意味になります。つまり、「思い込みの激しい頑固者」といったイメージでしょうか。

主な登場人物

  • ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン:金持ちの主人公(テノール)
  • ロザリンデ:アイゼンシュタインの妻(ソプラノ)
  • ファルケ博士:アイゼンシュタインの友人(バリトン)
  • フランク:刑務所長(バリトン)
  • オルロフスキー侯爵:ロシアの貴族(カウンターテナーまたはメゾソプラノ)
  • アルフレード:オペラ歌手、副業で音楽の先生をしているようです。実はイーダの恋人(テノール)
  • アデーレ:アイゼンシュタイン家の女中さん(ソプラノ)
  • イーダ:アデーレの姉(妹という説もあります。歌手が起用されますが、ソロで歌うことはありません)
  • ブリント:アイゼンシュタイン氏お抱えの弁護士(バリトン)
  • フロッシュ:刑務所の看守(通常は役者さん)

「あらすじ」と見どころ、聴きどころ

有名なオペレッタなので、「あら